大田区★おひとりさま
地元にあってうれしい千鳥町の「バル」(ちバル)
2011年2月 4日 金曜日
明るいオレンジ色の看板とドアが目印
明るいオレンジ色の看板とドアが目印
 都心へ出てお金を出せば、おいしいお店はたくさんある。でも、仕事で疲れて、自分のホームタウンに帰ってきたとき、ホッとくつろげるお店があったなら、どんなに豊かな気持ちになれるだろう。決して野暮でなく、かといってお洒落すぎて気おくれすることもない。もちろん、お酒やお料理のクオリティには妥協したくない。でも値段は出来るだけリーズナブルな方がいい…。そんな「おひとりさま」にぴったりなのが、今回ご紹介する、千鳥町の「ちバル」である。
 「ちバル」の店主・浅野さんは、生まれも育ちも大田区の出身だ。調理師学校を卒業し、ホテルのレストランに就職したのを皮切りに、様々な調理の現場で腕を磨いてきた。イタリアンレストランに勤務していたとき、ワインに興味を持つようになり、スクールに通って勉強を始める。資格を取得してからは、レストランやバールでソムリエとしての経験も積み、2009年6月に「ちバル」をオープン。現在に至る。
 「千鳥町」の「バル」だから、「ちバル」と命名。千鳥町を選んだのは、たまたま条件と予算が合っていたから。でも、実際にお店をやってみて、ここにお店を開いてよかったと思っているという。「ご近所の飲食店さんや整骨院さんにも仲良くしていただいて、お客様をご紹介したり、逆に紹介されたりするんです。千鳥町は住宅街で落ち着いていて、穏やかでいい方が多いように感じます」。
当日の料理がびっしりと書き込まれた黒板
当日の料理がびっしりと書き込まれた黒板
 「ちバル」の一番の特徴は、ワインを中心とした、お酒と料理へのこだわりだ。ソムリエの肩書きを持ち、忙しい合間をぬって今もワインの勉強を続ける浅野さんだが、ワインの難しい話はほとんどしない。そしてお店では、できるだけ日常に飲める値段で、おいしいワインを、その日の料理にあわせてセレクトする。それは、日本のワインソムリエの草分け的存在、磧本(せきもと)修二氏と仕事をした経験によるものが大きい。「ワインは特別なものでもないし、こうしなきゃいけないという堅苦しいものでもない。食事にあわせて、自由に組み合わせる。楽しむことが一番大切だと教わりました」。
 料理の食材に関しては、野菜はほとんどが路地物で、自然食品店か、産地に直接出向いて仕入れてくる。なるべくハウスものは使わない。低農薬のものを選ぶことはもちろんだが、最近は、形だけの有機栽培や健康志向に疑問を感じ始めているという。「一生懸命作っている人の野菜は、食べれば分かる。ときどき、はっとするほどおいしい野菜に出会うことがあるんです。何にも手を加えなくても、ただただおいしい。そういう食材を使っていきたいと思いますね」。調味料なども、これまでは海外に目を向けることが多かったが、最近は国内、特に地方のものに注目しているという。
 メニューで特筆すべきなのは、旬のアラカルトが充実していることだ。毎回、食材を手にしてから、一番おいしい食べ方を考えるという。1月の訪問時には、「皮から手づくり水餃子(春菊入り)」「ポトフ」「カブと山芋とレンコンのピクルス」「生海苔のスパゲティー」など、その季節ならではのおいしいものが目白押しだった。野菜のメニューが多いのは、「旬のおいしい野菜をたくさん食べてほしい」という浅野さんの気持ちの表れだろう。お店のブログ「ちバル日記」にも、その様子が随時更新されている。こんなにたくさんメニューを考えるのは、大変ではないですか?との記者の問いには、「もともと、ものをつくることが好きだし、いろいろと工夫してみるのが好き。チャレンジしてみたいことはまだまだたくさんある」という意欲的な答えが返ってきた。
発色剤を使わない自家製ロースハムサラダ添え
発色剤を使わない自家製ロースハムサラダ添え
 これだけのものを提供していながら、価格はグラスワインが500円から。お料理も基本は一皿500円で、2杯飲んで、軽く食べて2000円の計算だ。チャージ料はとっていない。「1杯だけサッと飲んで帰りたいときもあるでしょう」という言葉からは、控えめながら、お酒を愛する人への思いやりが感じられる。
 店には、30代から40代を中心に、幅広い年代の人が集まる。千鳥町駅徒歩2分と、駅から近いのもうれしい限りだ。店内はカウンターのみの8席で、こぢんまりと落ち着ける。落ち着いて飲んで食べることができるというので、女性のおひとりさまにも人気が高い。夫婦やカップルの待ち合わせで、どちらか一方が早く到着して軽く飲み、遅れてくるもう一方を待って一緒に飲む、という使い方をする人も多いとか。「いらっしゃったお客さんが、楽しい時間を過ごしてくれるのが、一番うれしい。料理やお酒を提供するだけでなく、カウンターごしにお客さんと話すのも面白い。人と人との結びつきも大切にしていきたいテーマです」。
 おいしいご飯や家族が待っていると思うと、家に帰るのが楽しみになるものだ。それと同じで、近くに、確かな仕事をしている店があると思うとうれしくて、早く帰ろうという気になってしまう。「ちバル」はそんな魅力を持った店である。

ちバル
大田区千鳥1-18-4ライオンズマンション千鳥町111
03-6310-6379
(平日)18:00-24:00(土日祝)18:00-23:00
火曜定休
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