大田区★おひとりさま
「縁」と「元気」を育む八百屋さん(気まぐれ八百屋だんだん)
2011年1月21日 金曜日
友人の作品という手書きののぼり旗が目印
友人の作品という手書きののぼり旗が目印
 東急池上線蓮沼駅。商店街から一本路地へ入った通り沿いに、「気まぐれ八百屋だんだん」はある。「だんだん」は島根の方言で「ありがとう」の意味であるという。元の居酒屋さんの面影がそのまま残る店内には、店主の近藤博子さんの地元・島根県から取り寄せた、選りすぐりの農産物と、横浜市郊外や栃木県の農家から直接仕入れた新鮮な野菜が、所狭しと並んでいる。
 「もともとは、週末だけの野菜の配達から始めたんです。その仕分けのために借りたのが、この場所でした」と、店主の近藤さんは振り返る。「でも、あるとき、扉を開けて大根を仕分けしていたら、通りがかりのおばあさんに売ってくれないかといわれて。私も、せっかく仕入れた新鮮なお野菜だから、みんなに知ってもらえて、食べてもらえるなら、と思って、ここでの営業を始めたんです」。
小上がりの畳スペースはみんなの交流場所
小上がりの畳スペースはみんなの交流場所
 営業を開始して間もなく、近藤さんが考えたのは、この居酒屋風の店のつくりをうまく活用できないかということだった。特に、店の約半分を占める、小上がりの畳スペース。ここで何かやったらいいのではと思っていたある日のこと、夏休みに、子どもを対象にした補習教室をやってはどうかというアイディアが持ち込まれた。名づけて「ワンコイン寺子屋」。入退場自由、1時間500円で利用できるとあって人気となり、その後も、平日の午後や土曜日の夜に継続して開かれるようになった。その様子は、「八百屋さんの寺子屋教室」として、新聞の全国紙の記事として取り上げられ、大きな話題を呼んだ。寺子屋だけでなく、お客さんから持ち込まれたアイディアは、「日本のお菓子づくり教室」や「メディカルハーブ教室」、「水彩色えんぴつ画教室」「絵手紙教室」などの形となって、次々と実現していく。やがて「だんだん」の店内は、これらの参加者たちで、いつも賑わう状況になっていった。
 「私ね、人の笑顔や元気に出会うのが好きなんです」と、近藤さんはニコッと笑う。野菜や商品が売れるのも、もちろん嬉しいけれど、それと同じくらい、ここで出会った人どうしが仲良くなって、つながりができたり、寺子屋で勉強した子どもが、疑問が解けてうれしそうに帰っていく、そんな姿を見ると、ああ、やってよかったなと思えるのだそうだ。
近藤さんの出身地・島根県から取り寄せたあごだしつゆ(630円)
近藤さんの出身地・島根県から取り寄せたあごだしつゆ(630円)
 5年前まで、歯科衛生士として、企業の診療室に勤務していた近藤さん。その頃は、「食」の大切さに気付いてはいたものの、企業の歯科衛生士という立場上、出来ることは限られていたという。それが、地域の八百屋さんとして、実際の子どもたちの生活や、日本の農業の問題などにかかわるようになってからは、以前よりも大きな視点で「食」について考えるようになったという。そして最近は、「食」の観点からのみならず、一人暮らしをしているお年寄りが、ふらりと来てお茶を飲んだり、悩みを抱えている人が、話をきいてもらってホッとできる、そんな場もあわせて提供していくことで、心身ともに、より元気に、健康に暮らす手助けができたらと、考えるようになったそうだ。
 今日も「だんだん」には、野菜を買いがてら、何かを話したい人、何かを聞いて欲しい人、何かをやってみたい人、いろいろな人がやってくる。小上がりの畳スペースでは、試食の真っ最中だったり、誰かがくつろいでいたり、熱心に本を読んでいたりする。「私が指示するというよりは、皆が好きに使って、縁を広げてくれたらいい」という、近藤さんの「だんだん」は、地域の交差点のような存在になりつつある。こんな場所がたくさん増えたら、世の中は、もっと変わっていくのかもしれない。人の縁と元気を育てる店、それが「だんだん」なのである。

気まぐれ八百屋だんだん
大田区東矢口1-17-9
03-3736-4006
14:00-19:00(火-金)
10:00-18:00(土・日・祝)
月曜定休
※配達中は閉店している可能性あり
http://ameblo.jp/kimagureyaoyadandan/
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