大田区★おひとりさま
コーヒーの香りと笑顔があふれるカフェ(カフェパーチェ)
2010年7月29日 木曜日
笑顔のスタッフがいきいきと働く
笑顔のスタッフがいきいきと働く
 JR大森駅近く「大森銀座商店街」のまんなかに、おいしいコーヒーが飲めるカフェ「パーチェ」がある。店内に漂うコーヒーの豊かな香り。店内にあるドイツ製の焙煎機で毎日豆を自家焙煎する本格派。コーヒー(300円より)やケーキ(360円より)、手作りの惣菜つきのピラフやパスタなどの軽食(セット700円)が楽しめる。
 このカフェを運営するのは知的発達障がい者の就業と自立を応援している「NPO法人パーチェ」。現在8人の障がい者が、接客に調理、豆の販売など、開店準備から閉店作業すべてを分担作業で担っており、通所訓練の場としての側面ももっている。おいしいコーヒーを出すことだけでない、彼らの自立という大きな目標がこのカフェにはある。
「ショコラスコット」のケーキセット(630円)
「ショコラスコット」のケーキセット(630円)
 障がいのある子どもを持つ親は、なにより「自分がいなくなった後」の子どもの将来に不安を抱えているという。障がい者の多くは、特別支援学校などの学校教育を卒業すると授産施設や作業所などで作業をしたり、訓練を受けることになる。一般企業に就職するひとはまだごくわずか。多少の収入は得られるものの、自立し安定した生活を送ることはなかなか難しいのが実状だ。
 代表の藤好登美子さん自身も、知的障がい者のお子さんを育てながら、子どもの将来を案じ、もっと障がい者が訓練をしたり働いたりする場所が地域に必要だと痛感していた親のひとりだった。約7年間、大田区役所内にある喫茶室「コスモ」(社会福祉法人大田幸陽会)で働く知的障がい者のサポートをしながら、接客の仕事を通じ子ども達が成長していく姿を目の当たりにして、社会の中でこそ学べることが多いと感じたという。「毎日違った人と会い、毎日同じことがない喫茶店の仕事には刺激がある。人から感謝されることで生きがいも感じられる。社会での学びが一番、子どもたちをいきいきと成長させる」と藤好さん。
毎日店で焙煎する、豆も好評
毎日店で焙煎する、豆も好評
 2006年4月、私財を投じ、賛同する仲間とともにNPO法人を設立、同名のカフェを開店。「パーチェ(PACE)」はイタリア語で「平和」を意味することば。障がいのあるひともないひとも、ともに過ごせる地域の憩いの場にしたいという願いが込められている。商店街のなかに店を構えたのもそのためだ。
 パーチェで働くひとたちの、障がいの種類や度合いはそれぞれ。各々の得手不得手を見極めながら、そのひとなりのカリキュラムを組みたて、藤好さんとともにスタッフの指導にあたるのはグランドチーフの相澤あゆみさん。相澤さんもまた障がいのあるお子さんを持つ親として藤好さんと出会い、設立当初からパーチェを支える片腕である。「自分の能力を知るのはとても大事なこと。自立のためには、障がいがあるから…と家族や社会に甘えていてはいけないと、障がい者にも、障がい者の親にも強くいいたい。私自身が障がい者の親だからこそ」と相澤さん。その厳しくも温かいまなざしに、この活動への並々ならぬ思いが伝わってくる。
ギャラリーやミーティングなどにも利用できる2階
ギャラリーやミーティングなどにも利用できる2階
 もちろんお店のサービスにも甘えはない。焙煎したての豆で淹れるコーヒー「パーチェブレンド」(300円)はすっきりとした後味で、飲み飽きない。「少しづつ丁寧に焙煎してこそ出せる」豊かな味わいだ。地元企業・チモトコーヒー(大田区池上4)で生豆から仕入れ、熟考を重ねたパーチェ自慢のオリジナル。喫茶やランチとしての利用だけでなく、豆を目当てに遠方から買いにくる顧客も増えているという。「ベンツ1台分」(!)という焙煎機を導入した藤好さんの英断が功を奏し、売上のおおきな柱にもなっている。
 2階はギャラリーやミーティングなどにも利用できるレンタルスペースになっており、これまでにも個展やミニコンサートなどが開催されてきた。淹れたてコーヒーのポットサービスがつくのも、パーチェならではの魅力。また、毎月第二土曜日には相澤さんが代表を務める「大田区発達障がい親の会あか・しろ・きいろ」が、発達障がい児を持つ親たちの相談窓口としての機能も果たしている。
 今日も店には元気な「いらっしゃいませ」の声が響く。ほっとひといき、障がいのあるひともないひとも、心穏やかに過ごせる空間。そんな店のあるまちは、きっと居心地がいいにちがいない。

カフェパーチェ
東京都大田区大森北1-29-15
TEL&FAX 03-3764-0858
営業時間9:00-17:00
日曜休
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